
糖尿病によって起こる合併症として網膜症や腎症、神経障害などは有名ですが、それ以外にも糖尿病が足に様々な悪影響を与えてしまうことが分かっています。
今回お伝えする内容は糖尿病性神経障害による足の痛みなどの症状ではなく、糖尿病が原因となって足部にどんな影響が出てしまうのかを分かりやすく解説していきます。
糖尿病の初期にある方も今回お伝えするようなことが身体に起きてきてしまう恐れがあることを憶えておいてください。
足の痛みは日常生活から仕事まで普段の暮らしを妨げてしまいます。ぜひ、この情報を参考にして、あなたの身体を見直すきっかけにして頂けたらと思います。
この記事を書いている私はオステオパシー歴7年、臨床歴9年、理学療法士【国家資格】を取得しており、総合病院で3年間勤務経験があります。
病院勤務の時から軽度~重篤な糖尿病の方を多く見てきた経験がありますので記事の信頼性に繋がるかと思います。
本記事の内容
動画でも解説していますので、良かったらご視聴ください。
糖尿病が足に与える影響
糖尿病は世界中で2億人以上が罹患しており、20年後にはこの倍は増えるだろうと言われている慢性疾患です。
糖尿病は潰瘍、感染症、神経障害、足部の深部組織の破壊など血管や神経性合併症につながる可能性がある恐ろしい慢性疾患だと言えます。
「糖尿病足」といって、糖尿病によって足部に様々な悪影響が出てしまうことが研究で分かってきています。
足底筋膜への影響
糖尿病が足底筋膜に与える影響の研究についてです。
糖尿病患者の足底筋膜はMRIを用いた研究によって断裂を示す不連続性を示した。これは高血糖状態が続くことで非酵素的糖鎖結合(ひこうそてきとうさけつごう)によって足底腱膜が厚く硬くなり断裂しやすくさせるということが報告されています。
高血糖状態が続くことでコラーゲンや角質に糖分が付着し、コラーゲンや角質の糖化が起こります。その結果コラーゲンの豊富な皮下組織、腱、靭帯、筋膜、関節包などの変性を引き起こしてしまうことを言います。
糖尿病患者の足底筋膜が部分断裂をしているという報告がある一方で、そうではなかったという研究報告もあり、糖尿病=足手筋膜が部分断裂するというのは不確定だと言われています。
また、別の報告では足底筋膜が糖尿病患者の方が厚い場合があることが分かっています。糖尿病患者の足底筋膜が厚く硬くなっているというのは多くの研究報告があり、これも非酵素的糖鎖結合が原因だと言われています。
アキレス腱への影響
糖尿病患者にはアキレス腱のコラーゲン含有量の低下が認められています。
これは非酵素的糖鎖結合によるものと考えられています。
コラーゲン含有量の低下によって、アキレス腱の柔軟性低下や筋力低下、肥厚(固く厚くなる)ことが分かっています。
アキレス腱が固く弾力性がなくなってきて短縮してくると、足の可動域が狭くなったり、尖足変形という足首を上に上げる(背屈)動作ができなくなるような状態を招きます。
足部と足関節の可動性への影響
糖尿病患者の足部や足関節の可動域が有意に低下していたという報告があります。
これも原因は非酵素的糖鎖結合と言われています。
足部・足関節の可動域制限は様々な弊害を生みます。
歩行時の痛みや不自然さ、衝撃吸収能力の減少、上肢や体幹に与える影響など、足部だけでは済まない様々な不具合が身体に出始めます。
糖尿病で起こる足の変化
糖尿病足は、糖尿病が進行している方に起こる足部の変化です。
簡単にまとめると
・アキレス腱が厚く硬くなり短くなる
・足部と足関節の可動域制限
これら全てが重なり、糖尿病患者において足を接地するときの圧が増加することが分かっています。
つまり、足への負担が増加してしまうのです。
糖尿病患者に足の痛みを併発している方が多いのはこのためです。
足に痛みが出てしまうのはもちろんのこと、歩行の不自然さや足部や足趾の変形をも招いてしまいます。
その状態が続くとやがて足に潰瘍(皮膚が傷ついて欠損した状態)が出来やすくなってしまいます。
糖尿病性神経障害を合併していて足の感覚が乏しい場合、足部に傷が出来てしまうとそこから壊死が始まってしまう恐れがあります。
糖尿病によって足におこる構造的な変化を甘く見てはいけません。
糖尿病初期の方や普段から糖質を多く摂取している方は、このように身体に多大なダメージを与えてしまうことがあることをぜひ知っておいてください。
まとめ
いかがでしたか?
糖尿病によって足に様々な弊害が出てしまうことが分かっています。
足底筋膜の肥厚、アキレス腱の肥厚と短縮、足部と足関節の可動域制限。
これらが重なることで足の変形や痛みなどを招いてしまいます。
糖尿病の初期の方や普段から糖質を多く摂取している方は少しずつ身体にこのような変化が起きているのだということを知っておいて、普段から気を付けるようにしてくださいね。
参考文献
人体の張力ネットワーク 膜・筋膜 竹井仁監訳 医歯薬出版株式会社
この足の痛みと糖尿病の関係【糖尿病足】を書いた人

丸井恒介(まるいこうすけ)
出身地 | 東京 |
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生年月日 | 1985年2月3日 |
国家資格 | 理学療法士 |
所属 | 全日本オステオパシー協会 日本オステオパシー連合 IOAJ (International Osteopathic Association of Japan) |
経歴 | 平成 21年日本リハビリテーション専門学校入学 日本リハビリテーション専門学校理学療法学科卒業 平成 25年医療法人社団河井病院勤務 平成 25年日本オステオパシー協会入会 |